デザインのある光景Number: 37

世界における主要宗教の信者数をご存じだろうか？ブリタニカ国際年鑑（2017年版）によると、最も多いのがキリスト教（24.5億人）、続いてイスラム教（17.5億人）、3位がヒンズー教（10.2億人）となっている。世界で2番目に信者が多いイスラム教だが、日本ではその教えや実態があまり知られていないのが現状だ。

東京都渋谷区の代々木上原駅から5分ほど歩くと、閑静な住宅街に現れる、イスラム教の礼拝堂（モスク）。ここは約1200人が同時に礼拝できる日本最大規模を誇るモスクで、高さ41ｍの尖塔と直径11ｍのドームが印象的なオスマントルコ様式の建築だ。内部はカリグラフィ（アラビア文字の書道）やアラベスク（植物をモチーフとした文様）、精緻な幾何学文様などで装飾され、息を呑むような美しさ。内外装に使った材料はほぼトルコから取り寄せており、多い時には100人もの職人や技術者がトルコから来日。施工期間2年、2000年に完成した本格的なトルコ・イスラームのモスクだ。

写真は礼拝堂上部の大小のドームを真下から、シャンデリア越しに撮影したもの。「メインドームは天蓋を表し、取り囲む6つの半円ドームとともに宇宙を表現しているのです」。教えてくれたのは、広報担当の下山茂さん。大学時代にナイル河全域踏査隊の一員としてアフリカを旅した際、訪れたさまざまな村で感じたイスラム教徒のホスピタリティーに感銘を受け、信者になった経歴の持ち主だ。

「イスラム教にはさまざまな教えがありますが、イスラムを世界宗教にした普遍のメッセージの１つは‟人間はみな神の前では平等だ“ということ。集団での礼拝のとき、皮膚の色、民族、貧富、社会的地位に関係なく横一列に並びますが、この光景こそがイスラム教の大きな特徴です」。

東京ジャーミイは毎日午前10時から午後6時まで見学自由（金曜のみ午後2時以降から）。土日祝日の午後2時30分からは日本語ガイド付き無料ツアーも実施するなど、信者以外の訪問を歓迎する開かれた場所でもある。「１人でも多くの人に来ていただき、イスラム建築やアートの美しさに触れ、イスラムの教えの素晴らしさを知ってもらいたいと願っています」。