デザインのある光景Number: 31


Subject:

Hermit’s Hut

Text: Yoshiko Taniguchi

Photo: Kyoko Omori

Mother Comet No.43 | 2019.October

お茶の生産が盛んで、国民1人あたりのお茶の消費量が東アジア内でベスト3にランクインする台湾。“お茶をいかにおいしく飲むか”に重きを置く「茶芸文化」が日常に息づいており、種類豊富なお茶を楽しみながら、人との交流を生み出す「茶芸館」は万人に愛される憩いのサロンだ。

今回紹介する「三径就荒」(サンジンジュウファン)は、MRT市政府駅から徒歩8分。再開発が進むエリアの裏通りにひっそりと店を構えているが、スタイリッシュな店づくりと若きオーナー夫妻の深いこだわりが話題となり、「新しいタイプの茶芸館」として注目を集めている店だ。

「30年ほど前まで、お茶はとてもポピュラーなもので、どの家庭にも食事後にお茶で一息つく時間が必ずありました。次第にお茶が芸術品のような存在になったことや、コーヒー文化が広く普及したことで、若い世代には“お茶は高いし、古い存在”になってしまったんです」。そう語るのは、見惚れるほど美しい所作でお茶を淹れてくれた、オーナーのヴィッキーさん(写真)。茶道をたしなんでいた母親の影響で、幼い頃からお茶に興味を持ち、歴史や作法、器など、茶にまつわる幅広い知識を習得。専門誌を創刊し、独自の茶葉ブランドをネット販売するなど、お茶の事業を展開する中で「若い人たちにもお茶の良さを直接伝えたい」と思い立ち、2017年に「三径就荒」をオープンさせた。

彼女が一番心を砕いているのは「お茶を飲みなれていない人にも伝わる、わかりやすさ」。味やランク、産地、蒸らす時間や温度など、おいしく飲むための情報を明記したカードがあり、一煎目はスタッフが手本を示しながら淹れ方をレクチャー。初心者も安心してお茶が楽しめるよう、細部に工夫を凝らす。オーナー厳選の個性的な茶器で味わうお茶は香り、味わいともにバラエティー豊かで、2杯、3杯目とお湯を注ぐ度に変わる風味も、楽しみのひとつだ。

白を主体とした空間に、フランスのアンティーク家具を配し、室内デザイナーだったヴィッキーさんの美意識が隅々まで行き届いた空間は洗練されておりモダンだが、肩ひじ張らない親しみやすさや居心地の良さを感じるのは、「三径就荒」がお茶を愛し、かぐわしい香りと味で癒しを与える「茶芸館」たる所以だろう。

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