デザインのある光景Number: 22


Subject:

Kukaisenun

Text: Yoshiko Taniguchi

Photo: Kyoko Omori

Mother Comet No.34 | 2019.January

10月にリニューアルオープンした北九州空港の「ラウンジひまわり」を訪れ、小倉織を使ったアートパネル「空海扇運」を見たとき、すぐに頭に浮かんだのは「ふさわしい」という言葉。空の玄関口にある、上質であるべきラウンジを、同市が誇る伝統工芸が凜とした存在感で旅人を迎え入れる。華美な演出はあえて排除され、立体的な視点を取り入れた設計の妙と、照明を使ったシンプルな演出が、小倉織の気高さを際立たせ、ラウンジをより洗練された空間へと昇華させる。空間と作品が存在価値を高め合う、極めて幸せなケースではないかと、深く感じ入った。

美しいたて縞が印象的な「小倉織」は、かつて武士の袴や帯として織られた、丈夫でなめらかな木綿の布。350年以上にわたり豊前小倉の地で紡がれていたが、昭和初期に消滅。しかし、骨董屋で偶然「小倉織」の端切れを見つけた染織家・築城則子さんが分析・研究を重ねた末、1984年復元に成功。以来、幻の織物は再び歴史を刻み始め、今や優れた織物として国内外で高く評価されている。

「小倉織」を薄く加工した鉄板に貼付し、幅7m、高さ1.7mというパネルにしたのは、先述の築城さんと、台湾生まれ・イギリス国籍をもつ建築家YANGHEN CHEN(ヤンヘン チェン)さん。過去に台湾で仕事をした二人は、互いの美意識を認め合い意気投合。以来、タッグを組んで革新的な作品制作に挑戦しており、「空海扇運」はその一つなのだ。

深い藍色と縞模様で宇宙空間を表現した『藍輪舞』を、扇面状に展開したモダンなデザイン。築城さんは「扇は末広と呼ばれ、開運・繁栄を意味する縁起の良い形。安全第一である空港から、運気をはらんだ風を起こしてほしい」という想いを込め、そこに「小倉織のシャープな雰囲気を最大限に生かしたい」というヤンさんのこだわりが共鳴することで縞模様の美学と大きな可能性を表現することに成功している

世界観を共有でき、且つ建築家の視点で立体的表現を得意とする、心強いパートナーを得た「小倉織」。多くの「ふさわしい」環境で、クールな輝きを放っていくだろう今後を、引き続き注目していきたい。

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