デザインのある光景Number: 4


Subject:

Musubi

Text: Yoshiko Taniguchi

Photo: Kyoko Omori

Mother Comet No.16 | 2017.July

「総角(あげまき)結び」と呼ばれる2つの結び。長さが40cmほどある写真のそれは、歌舞伎で使われるものを再現したもので、作者は古典芸能にまつわる組紐を手がける「柏屋」の職人・江口裕之さん。緑の組紐は若武者の鎧の背中につけられ、金色の組紐は「助六」という演目の中で、揚巻という名の花魁が髪に飾るものだ。よく見ると結び目が「人」(緑)、「入」(金)の形をしていることにお気づきだろうか?結びはそれぞれに意味を持つが、一般的には「入形」が用いられ、古くから武具には「人形」と伝えられているそう。前にしか飛ばない(前に進むしかない)とんぼになぞらえ、別名「とんぼう結び」と呼ばれたことからも、武士に好まれた結びであることがうかがえる。装飾性だけでなく、護符や魔除けなど様々な意味を持つ「総角結び」は、装飾結びの代表格のひとつだ。

「こうした結びは古典芸能の装飾だけでなく、いろんな場所で見られます」と教えてくれたのは、結びの研究・提案・制作を行う関根みゆきさん。身近なところでは神社のお守りや、注連縄、雛人形、地域の祭り、水引。相撲の吊り屋根の四隅についている房もその一つ。私たちは、日常のさまざまな場面で結びの伝統美を、無意識に目にしていることになる。

なにせ縄文時代から「ひと結び」の技法が存在したと言われており、世界各国で独特の文化が継承されている「結び」の世界。奥深い話をたくさん伺った中で、とても興味深かったのは「日本の結びは解くことが重要」だという一言。

関根さんによると、本来「結び」という言葉は「ムス(産ス)」という自らの生成力と、霊力をあらわす「ヒ(霊)」から成り立った言葉。古代の人々は結び目に神秘的な力を感じていたと考えられ、神様が訪れると言われている場所には、必ず「結び」が存在している。「日本人は形のない物を継ぐことに長けていて、今でも結びは結界や神域を表します。しめ縄を結んだ内側は神域。そこに一時的に神様に降りてきて頂き、結びを解くことで、神様を本来の場所へお送りします。」

機能性に長けたものからデザイン性の高いもの、さらには陰陽や吉凶など、強い精神性を帯びたものまである「結び」の世界。たった一本の紐から作り出される伝統的な技術は、素朴でありながら奥深く、そしてとても美しい。

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