デザインのある光景Number: 13


Subject:

Nago City Hall

Text: Yoshiko Taniguchi

Photo: Kyoko Omori

Mother Comet No.25 | 2018.April

青く美しい海に、個性豊かな郷土料理。沖縄を旅すれば行きたい場所、食べたいものが山ほどあって困るのが常だが、建築に興味を持っている人なら、本島の北部にある「名護市庁舎」は押さえておきたい場所のひとつだ。

那覇空港から、高速道路を利用して車でおよそ1時間30分。約6万2,000人の暮らしをサポートする市庁舎は、驚くほど“らしく”ない。写真は住宅地に面した北側から撮影したものだが“アジア圏の森の中にある古代遺跡”と言っても、しっくりする。南側にまわれば、3階まである壁の至るところに、仕様の異なるシーサーが53体も鎮座。加えて、経年劣化で色は薄くなっているが、建物全体はピンクと白の縞模様。やはり、どこから見ても役所っぽくないのだ。

1町4村の合併により誕生した名護市が、昭和53(1978)年に市政10周年事業として実施した、市庁舎建設の建築設計コンペ。当時、国内での公開コンペは長らく途絶えていたこともあり、全国から308もの応募が殺到。2段階選抜を経て1等に選ばれたのは「象設計集団」。独創的でありながら、地域と自然に溶け合うデザインを得意とする設計集団だ。

沖縄の風土と文化を色濃く反映したデザインからは、設計者たちの意思が強く感じ取れる。特に印象的なのは、2階と3階に設置した大きなテラス。ここは“市民に開放された市庁舎”を目指して「アサギテラス」と命名(アサギとは、神様が降りてくる場所として、沖縄の集落に点在。集会所のような場所)。誰でも出入り自由で、市庁舎をより親しみやすい場所にしている(テラスは閉庁時も出入りOK)。また省エネにも取り組み、当時はエアコンを設置せず、通風管から自然の風を取り入れる仕組みを考案(現在はエアコンを活用中)。沖縄で広く使われる穴の開いた「花ブロック」は風通しがよく、絡みつくブーゲンビリアは心地よい木陰を作る。37年前の建物にもかかわらず、西棟には屋上緑化のための芝生広場も。斬新なアイディアと先駆的な取り組みが評価され、「第33回日本建築学会賞作品賞」を受賞している。

しかし名建築と言えど、近年は老朽化や耐震の問題で姿を消してしまう建物も少なくない。沖縄を訪れた際は、目に焼き付けておくべき稀有な建築物のひとつだ。

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